第 3095 号2008.05.18
「 おかげさま 」
佐藤 明子(岡山県津山市)
「おかげさま」
「ありがとう。」お風呂の介助をした私に、ひいおばあちゃんはいつものように深々と頭を下げました。
私の実家には101歳になるひいおばあちゃん(祖々母)がいます。
二本杖を使い、何とか歩くことはできますが、認知症がすすみ、「おいしい。」「ありがとう。」などの言葉をたまに言うくらいになっていました。
ある朝、ひいおばあちゃんをご飯に連れてこようと、離れに行くと、窓に向かって手を合わせ、「ありがとうございます。」「ありがとうございます。」とつぶやいていました。「ひいおばあちゃん、誰にお礼を言ってるの?」と聞いてみましたが、手を合わせたまま私の方を見て、ニコニコと笑っているだけでした。私は、信仰深いひいおばあちゃんが、仏様にお祈りしているのだろうと思いました。祖母にその話をすると、「仏様じゃなくて、太陽にお祈りしているんだと思うよ。農家にとって、太陽はとってもありがたいものだからね。」と教えてくれました。
朝日を浴びながらお祈りしているひいおばあちゃんの姿と、まだ若い頃、田畑を汗水流しながら耕している姿が重なって見えるような気がしました。
毎日太陽が昇ることを、あたり前のように暮らしてきた私にとって、ひいおばあちゃんの手を合わせる姿は強く心に響いてきました。
私は、自分をとりまくあらゆるもののおかげで生きていることを、ついつい忘れてしまいます。そんな時、実家に帰って、ひいおばあちゃんと一緒にいると、人として一番大切にしなければならないことを教えてもらえる気がします。
ひいおばあちゃんが101年間大切にしてきた「おかげさま」の心に、少しでも近づくことができるように、努力したいと思います。