第 3087 号2008.03.23
「 お楽しみはこれから! 」
中川 渚(ペンネーム)
卒業してから35年、はじめての中学の同窓会の通知が届いた。
案内状には「人生も三分の二を過ぎました・・」とある。50歳。
子育てを終えつつあり、仕事もベテランの域。リセットして、新たな人生を歩みだそうとしている年代だ。
かつてのクラスメートとは疎遠だがら、いまさら顔を出しても楽しいだろうか、とちょっとためらわれたが、なぜだか参加したいという思いに駆られた。
みんながどう生きているか、知りたかったのだろうか。いや、みんなより自分が幸せか、若いかどうかを確かめたかったのかもしれない。やれやれだ。
当日は多少の緊張が高揚感となって、足取りも軽く会場へ足を運んだ。いるいる、社長になっている人、孫のいる人、同級生同士で結婚した人、独身の人、離婚した人、いろいろな境遇の、かつての同級生がそこにいる。あの頃は、自由な時間も無限にあり、将来の夢も期待も公平に与えられていた。
でも、今は違う。それぞれの境遇の中で、それぞれに生きている。なにしろ35年という歳月だ。変わらないはずがない。それでも、気持ちは一気に中学時代へと戻り、思い出話に花が咲く。
教室に差しこむ日差しや帰り道に土手からながめた夕陽、校庭の砂ぼこりのにおい、そして制服に身を包んだ友の無邪気な顔がリアルによみがえってくる。でも、もうあそこには戻れない。寂しさに胸が苦しくなるほど、切なくなったが、今、こうして長い年月を経ての再会を喜べる同士となれたのだ。戻れないけどまだ、人生三分の一もあるのだから、また、一緒に楽しもうではないか。
タイムカプセルのように、こんな楽しみを用意しておいてくれた中学時代に、そして、同窓会に感謝の気持ちでいっぱいだ。