第 3084 号2008.03.02
「 負け好きになろう 」
ル ル(ペンネーム)
最近めっきり年を感じるようになってきた。その分だけ焦り
がつのるのか、なんでもいっぺんにしたくなる。食器を洗いな
がら、鍋をかき混ぜたり、薬の整理をしながら、買い物リスト
を書いたりしている。そんな私を見て、次女が代わりを買って
出てくれながら言った。
「これはとても大切なことだから、聞いてね」
なんだか、宝くじの発表前のような緊迫感が漂う。
「私は、いつも思ってきたのよ。手伝うという気持ちはその余った時間に体を休めて欲しいなって。でもお母さんはそれならと、また次の仕事を探してはじめてしまう。ゆっくりとしてほしいのに・・・あまり急ぎすぎると早く死んじゃうよ」
そう言われたとき、いつもいつもせわしく走り続けてきた自
分の姿が、そしてますます磨きがかかってきたそのちょこまか
しさが急に色あせて見えてきた。
確かに。ゆっくりと生きた方がいいのかもしれない。やり残
したっていいじゃないか、今日できなくったって明日やればい
いじゃないか。負けず嫌いで通してきた自分から、負け好きな
自分に代わろう。そしてこのやさしい子の為に少しでも長生き
しよう。
娘の目を見つめながら深く反省した。
私自身もそうだったように、子供は親には長生きしてほしい
ものだけれど、自分が年を取ってしまうと、子供の気持ちを忘
れてしまうようだ。残された時間だけが目の前に大きくのさば
るようになる。そしてどうしても無理してしまう。
私が救われた言葉を同じように多分走り続けてきたであろう
団塊の世代の人たちに贈りたくなった。