第 3077 号2008.01.13
「 事の顛末 」
広井 澄子(練馬区)
「とうとう行く事になるみたい」こんな電話で始まった二男一家のドイツ行。「ウワ-念願叶ってよかったね」とは云ったものゝ、たとえ五、六年にせよ遠く離れて暮らし、すぐには会えぬという思いがトッサにこみ上げて来て、まだ数ヶ月程も先の事なのに体中の力が抜けた様に感じた去年の私であった。
それが半年余りたったクリスマスに、一家四人が休暇で一時帰国、狭い我が家で過ごす事になり嬉しさ半分もう大変という思いで準備を始めたその矢先、降りる毎に危ないから気をつけてとまるで呪文の様に唱えていた我が家の階段で、最後の二段目からすべり落ち腰を強打、まるで上半身が下半身にスッポリはまり込んだ様「とうとうやっちゃった」と
いう早朝の悲鳴にいつもは知らん顔のご主人様が飛んで来て、見当違いの処をさすってくれて思わず泣き笑い、ちなみに普段は老々二人静かな日々だが一週間後には小戦争が始まるぞとばかり、自己流の温湿布&鎮痛剤の手当をしつゝ少しずつ準備を開始、しかし浴室の鏡に写った腰周辺の変色の凄さにはため息をつくばかりだった。折角の帰国なのにちょっと重荷に感じてしまった罰と、我が心を戒めつゝいつものママチャリに替えてカートを引きずっての日々となった。
さて難行苦行のさ中、ドイツ一家無事帰国。やはり久し振りの再会は嬉しく、取り分け孫二人が可愛くて思い切り甘やかして過ごした一週間だった。滞在はアッと云う間に了、元日早朝我が家の前から車に乗り込んでゴーン。
連絡がうまく行かず心配していたが数十時間後無事到着の報にホッとした。そして明け渡していた二階の大掃除に老々二人大奮闘、寂しさと疲れで会話も途切れがちで再び二階に舞い戻り、いつもの静寂な夜を迎えたという「事の顛末」でありました。