第 3071 号2007.12.02
「 ふっくら、ほっこりのおさいふ 」
真 紅(ペンネーム)
私の鞄には、黒い革製で、カードやクーポン券、名刺や小銭、メモなどでパンパンにふくらんだ財布がいつも入っている。そこそこのブランドものだったけど、もう、ロゴもはげ落ちて、色気も素っ気もない姿になってしまっている、そんな、お財布。
「大きくてカードがいっぱい入って、丈夫な財布が欲しい。」思えば13年前、当時の彼に、つきあって初めての誕生日祝いにと、こうねだった。
彼は、そんな私の色気のない注文に応えて、何件も店を回って探してくれたっけ。おかげで、希望どおりの、ポケットがたくさんあってなんでも入るお財布が届けられた。私はとってもとってもうれしくて、もらったその日から、なんでも詰め込んで財布をパンパンにふくらませた。
それからずーっと、私はこのお財布一筋。彼とは、その後一時別れたけれど、私はそれでも使い続け、そして、彼と再開し、結婚した今も、財布はずっと私の側にある。ということは、考えてみれば夫よりも財布の方が長いつきあいだ。
いつか、この財布が壊れたらどうしようかと、同じような財布を探してみることもあるが、どこにも売っていない。おしゃれな財布はいくらでもあるのに、こんなに何でも入るお財布は、どこにも見あたらないのだ。
困って、財布をじっと眺めると、なんだか夫に似ている気がしてきた。
見た目はよくないけれど、私にとってとても使いやすくて、しっくりとなじんで、ほっこりとした気持ちにしてくれる。そして、なんでも、受け入れてくれる。そういえば、ふっくらとした姿も、似ているかも。
私のハードな使い方(←夫曰く)にもめげず、今のところこいつは壊れる気配もないので、最低あと10年は、できたら一生、使い続けたいな、と思っている。