「 無条件降伏 」
かんからかん(千葉県我孫子市)
我が家のがばいばあちゃんが88才の誕生日を迎えた。米寿だ!
今では80才、90才でお元気な方が本当に多いので、米寿といってもあまり珍しくない。この年齢の方々は、みんな厳しい時代を生き抜いてきた強者揃いで、今でもカクシャクとして、どこの家でも60代、50代の子供世代の方がへたれている。だって、戦中、戦後を生き抜いてきた波乱の人生に、中学出マシタ高校出マシタ大学出マシタ就職シマシタ結婚シマシタの私の人生の何が対抗できる?
というわけで、25年前に同居した時から、戦いを好まない私は即、無条件降伏。白旗を揚げたまま、傾聴に徹してきた。とはいえ、日常生活の中で、人生に対するリスペクトを不断に伝え続けるのはけっこう難しく、老齢化に伴う要求の高さについていくのも、こっちの息が切れてきた。朝から晩まで働きづめで動いてきた母が、最近はからだが思うように動かない分、頭は冴えているので、1日に何回も、憂える日本の現状について絨毯爆撃を放つ。
「昔は女は14になったら、どこへ嫁に出しても恥ずかしくないよう、親が仕込んだもんだ。私も14で、着物も布団も一人で縫えた。今は女も学校ばかり行って、結婚しても外に働きに行って、家のことも手仕事も何もしないで、中国人にやってもらっている。日本も滅びるのが当たり前だ。女が日本を滅ぼしたんだ!原点に還って、女が家を守らなきゃ!」
母がクリアしてきた人生を顧みれば、いや、ご意見ごもっとも!ではあるのだが、日本代表女子、私一人マンツーマンで立ち向かうにはけっこう重く、聞き流さないと身が持たない。ごめんね、ばあちゃん。無事に米寿を迎えた誕生日には、改めてノートとテレコを録って、14才で親に結婚を決められてから、戦時中に軍人と結婚して、結婚式の次の日から別居生活だった戦時中の話をインタビューした。やはり、がばい、すごい。
無条件降伏だ。