第 3047 号2007.06.17
「 もったいない 」
長坂 隆雄(千葉県船橋市)
景気の好転を反映してか、最近は家の建て直しが目につく様になった。
未だ充分に住める堅牢な住居が、無造作に取り壊され、廃棄物として処理されてゆくのは実にもったいない気がする。
家一軒をもつ事は大変な事であり、人生の最大イベントの一つといってもよい。木の香の新たな新築の家に入居した時の感激は今も記憶に新しい。
先進国を旅して感じる事は、建築物が大切に保存されており、我国の様に安易に廃棄したり、再建されない事である。ヨーロッパの人は自宅への愛着が強く、その保護、補修への努力を惜しまない様である。
我家は築後20年余りが経過し、子供達も成長し、夫婦二人きりになると、老人にとって不便に感じる事が多くなった。一時は建て直しも考えた。併し、過去20年余年住んでいた家の隅々には我家の歴史がある。残された子供達の部屋にも様々な思い出がある。一本の柱にも成長の跡がある。まして尚十分に住める家屋を廃棄する事はどうしても勿体なく、思い切って住宅リフォームを発注した。
耐震強化補強も行い、老人用に階段も緩やかに、廊下と各部屋との間も段差をなくした。見違える様に改装された住宅に満足の日々を送っている。
私は改めて、改築、改装が自由に可能な日本の木造建築の利点を再認識した。
経済大国日本の奢りが、限りある資源を浪費し、その事が人間の心の貧困をもたらして来た事を痛感する。
親子の断絶、教育の荒廃等の原点は、無造作に捨て去る姿勢にある様に思えてならない。