「 I Love Tokyo(札幌に戻ってきて) 」
三浦 さらさ(ペンネーム)
夫の東京での1年半の任期が終わり、再び札幌で生活を始めることになった。
結婚してから10年近く住んでいたのであるから、第2の故郷と言えなくもない・・・しかし、もともと、生まれ育ちが関東南部の私にとって、久しぶりに体験した札幌の4月は「寒い~!」の一言に尽きる。
道端には、雪の塊が残り、遠くの山々は麓まで真っ白である。つい1週間前に、東京で春爛漫といったお花見をしたことが嘘のようだ・・・。
街に出てみても、心なしか、道行く人の数が少ない。地下鉄の通路がだだっ広く、照明が暗いことも気になる。・・・。少しの間、住んでいなかっただけなのに「こんなところだったけ・・・?!」とカルチャーショックを受けてしまった。
感傷に浸る間もなく、生活が始まると、主婦がまずやらなくてはならないのが、ご飯作りである。北海道では、首都圏によくあるような駅前商店街というのは見かけない。替わりに、目にするのが市場である。これは観光客向けのものが有名であるが、住宅街などにも、地元の人が毎日の買い物のために利用するものがある。一つの建物の中に半ば露天形式で魚屋、肉屋、八百屋などが入っている。(もちろん、大型スーパーの進出で数は減ってきているのであるが・・・)私は、引っ越してから早々に、せっかくだからとスーパーではなく、近所の市場に買い物に出かけた。そこに一歩踏み入れたとたん、明るさと活気
に圧倒された!魚屋には、北海道ならではの紅マスの半身や、袋詰めされたカニの足、箱入りウニ・・・といったものが豪快に並べられ、八百屋では、これまた、北海道名物「行者にんにく」(ニラの一種?)やかたくり、タラの芽といった山菜が籠に盛られている。そうだった、
そうだった・・・秋になると魚は丸ごとの鮭とイクラ、鱈と白子、八百屋には、何種類もの地物のキノコが並ぶんだけ・・・ようやく、札幌の感覚を取り戻してきた。