「 誘われて 」
クゥー(ペンネーム)
自転車が届いた。
ともだちからのプレゼントだ。
大きな箱包みから小さく折りたたまれた自転車をとり出し
あちこち伸ばしたり縮めたり、締めたり緩めたり、
ああでもないこうでもないと悪戦苦闘しながらようやく完成。
散らかったダンボールやテープを片付けたあとの空間に
スクッと立つ真新しい自転車に思わず顔がほころぶ。
さっそく試し乗りをしてみたくなる。
先ずは盗難登録に近所の自転車屋さんに行こう。
必要もないギアチェンジを何段階も試し、ブレーキやベルの確認、坂道では立ち漕ぎまでした往復15分程度の初乗り。
普段使っていないのか太ももの辺りが少し重い。
運動不足の身体にはそれがかえって心地良い刺激に感じられる。
夕方、ちょっとした買い物を口実にまたひとっ走りすることに。
車なら5分とかからない距離。
自転車で行くからにはいつもと違うコースを選びたい。
大体の見当をつけて住宅街を走る。
行き止まりかと引き返そうとする視線の先に、狭い小道を発見!
そこをすり抜けると、目の前に田んぼが開けた。
レンゲが咲き乱れ、ひばりがさえずり、あちこちに植えられた色とりどりの花々を眺めながらゆっくりとペダルを踏む。
今にもこぼれ落ちそうな線香花火色した夕陽が目に前に迫ってくる。
夕飯、お風呂、風に運ばれて何処からともなく漂ってくる夕暮れ時。
ひとしきり遊んだ後、お腹を空かせて家路を急いだ遠い昔が蘇ってくる。
風にそよぐ若葉が放つ青いきれを胸いっぱいに吸い込みながら
久しぶりにジグザグに自転車を走らせてみた。
自然に溶け込んで、五感がじんわりとリフレッシュしていくのを感じた一日だった。
今度はおにぎりと飲み物、それに本をリュックに詰め込んで少し遠出してみよう!
考えるだけでちょっと楽しい気分になってくる。
出不精の私をワクワク感で外へ連れ出してくれた遠くの友に感謝したい。お気に入りの場所が見つかったら、写真に収めて送るとしよう。