第 3016 号2006.11.12
「 泥棒の目利き 」
川 野 ルミ子(世田谷区)
友人の家に空き巣が入った。
夫婦で外食を楽しみ夜の11時過ぎに帰宅したら、泥棒が家中を荒らした後だったという。
警察の話では、犯人たちの手口と足跡から見張りの一人を入れた外国人の、少なくとも3人組のプロ集団らしいという。彼等と鉢合わせしないで済んだのが、不幸中の幸いよねと慰めたのだが……。
泥棒の仕事、つまりその「盗み方」というのが何ともスゴイ!
金庫の鍵を壊し中身の現金、貴金属は勿論のこと、寝室にあった夫人の大きな宝石箱の中身も、しっかりより分けて持ち去った。
「より分けの規準」は、現金に18K以上の貴金属と宝石類だけ。債権類、通帳、印鑑には目もくれず、銀製品も置いて行くという徹底ぶりだった。
本物の宝石もイミテーションのアクセサリーも一緒に、宝石箱の7段の引き出しにぎっしり並べてあったものを、見事なほど完璧により分けて持ち去ったというから、その目利きの正確さには脱帽である。
ところが、最近買った新しいダイアのイヤリング一組だけが、何故か他のアクセサリーに混じって残っている。
彼女、喜んだのは束の間で、唯一残った「宝石」をじっくり良ーく見つめたところ、ダイアの輝きが「いまいち」であることに気が付いた。見れば見るほど、わからなくなる。
「あの見事な『目利き』の泥棒たちが残していったダイア!ひょっとして、えーっ、まさか……?」
「これ、お買い得ですのよ!」
そう言った店員の笑顔まで、なんだか疑わしく思えたというから、泥棒の目利きへの信頼性? かなりのものである。