第 3011 号2006.10.08
「 へそをつつく 」
仲 途 帆 波(ペンネーム)
株式や不動産と違い、値下がりして始末が悪いのはゴルフ会員権である。
何故かといえば、年会費の請求書が待ったなしに来るからだ。
私は先日、大分以前に200万円以上出して買ったゴルフ会員権を、約4分の1で手放した。かれこれ10年も利用していないのに、毎年取られ続ける4万円近い年会費に我慢出来なかったからである。それでも、持っている会員権が紙切れ同然に暴落してしまった人よりマシなのだが・・・。
さてそのン万円を手にすると、何となく落ち着かない気分になってきた。
競馬で大穴を当てたいわゆるアブク銭ではないのだし、大損して僅かに残ったお金だから、しっかり財布に仕舞っておくべきものだろう。
ところが何かに使いたくて、たまらないのである。
こんなとき、生前の母はよく「へそをつつく」という言い方をした。
母は会津の出身なので、会津へ行った時に何人かの人に聞いてみたが、首を傾げるばかりだった。また東京暮らしが長かったので、江戸っ子特有の言葉かとも考え図書館で調べてみたのだが、どうにも分からない。
それはともかく、ゴルフシューズがだいぶボロになったので購入、ドライバー1本も衝動買いした。またついつい気前が良くなり、普段より高級な店で食事したり、本は図書館で借りて読むを原則にしているのに思わず買ってしまったり、財布のひもは緩みっぱなしだった。
そしてあっと気がついたら、虎の子を入れた封筒は薄く薄くなっていた。
「江戸っ子は宵越しの金は持たねぇ」とか。しかしこれは、まとまった金を持てなかった庶民のことで、やせ我慢、空威張りを絵に描いたようなことだろう。
東京2代目の私にも、こんな血が流れているのかもしれない。