第 3005 号2006.08.27
「 掌に載る美 」
倉 越 よう子(ペンネーム)
先日とある美術館より封書が送られてきた。同封されていたのは次回の展示案内であり、読みながらこんどまた近いうちに行ってみようかな……と思ったのだが、その際、ちょっと目に留まったのが封筒に貼りつけてある切手であった。
じつはこの封書が届くことになったのは二週間くらい前にその某美術館の友の会に入会したからであり、私としては年間無料で幾度も入館できるのが魅力程度にしか思っていなかったものの、切手を見て、なるほどなあ、などと感慨にふけってしまったのである。
というのもその貼ってある切手の色・模様が封筒とのコーディネートを考えたかのようにあまりにもぴったりと合っていたからだった。
煉瓦色の地に黄とわずかに青が入った、どこかペルシャ風文様を連想させる絵画のような図柄の切手。
しばし私は封筒を手にしその切手を見つめていた。そして自分も普段から心がけてなるべく記念切手の中でも図柄の美しい切手を使うようにしているのだが、もし、こうして、受け取った相手の心になにかしらの余韻というか快い印象を残すことができているのであればそれは本当にうれしいなあ、と思ったのである。
掌に載るほんのちいさな一枚の切手。けれども美というものはそんな日常のちいさな所からも見出せるものであり、それを実践しているこの美術館はさすがであると感心しつつ、私はますますこの美術館のことが気に入ったのだった。