第 2981 号2006.03.12
「 サナダムシダイエット 」
川野 ルミ子(世田谷区)
JRのボックスシートで、二人の女子学生といっしょになった。
お手製らしいビーズのネックレスやキルトの手提げ袋が可愛らしい。
「ねぇー私さぁ、サナダムシ飼いたいんだ」
「えーっ?何でなんで?」
いくらペットブームとはいえ、サナダムシとは!
私は本を読んでいたのだが、隣でいきなり始まった話題に、全神経を集中させる。
「あれ、お腹に飼っているとやせるらしいよ。どんなに食べてもさ、太らないんだって。それってスゴイ楽じゃん!」
「ほんとうに、やせるの?」
「やせる、やせる!問題はどうやってお腹の中にいれるかなんだ」
「口からよね?生きたまま飲み込むわけでしょ?やだぁ、ちょっと気持ち悪くなぁい?」
私の目は、開いていた本の同じページの同じ行で止まっている。
ずっと、ずーっと昔の「虫くだしチョコレート」を思い出した。
「サナダムシさー、生きたまま飲むの大変そうじゃん。だから今、生野菜洗わないでがんがん食べてるわけよ。運がよければ、葉っぱに
ついてるベイビーを一緒に食べられるしー。小さい卵で飲んで、お腹で大きく育てるってわけよ。ところでさぁー……」
彼女の「新ダイエット案」は、突然フランス語の授業のはなしに替わり、そこまでになった。
彼女の「運が良ければ」説は、まず無理だから安心だとしても……。
「小さく飲んで大きく育てる」のではなくて、「小さく産んで大きく育てる」のは、今にあなたたちがママになるときの心構えよ!
私は心の中でつぶやいて、やっと次のページに進むことができた。