第 2980 号2006.03.05
「 桜の下でおめでとう 」
素 々(ペンネーム)
桜の木の下で繰り返された、卒園、入学そして卒業。どのひとコマにも思い出が一杯詰まっています。瞬く間の二十二年間でした。
いよいよ本当に巣立って行く君に、「おめでとう」と「ありがとう」を伝えたいと思う。
君のお陰で、母は沢山の経験が出来ました。春の音楽祭、田植え、夏のスポーツ大会、秋の文化祭、稲刈り・・・。君を通して季節の移ろい、時の流れを肌で感じることが出来て幸わせでした。そして、学校の行事を楽しみ、燃え感激の涙を流す姿を見て、遠い昔の自分を重ね、母はもう一度青春を楽しんだ思いでした。
花曇りの肌寒い高校卒業式。保護者だけの会で歌った、井上陽水の「少年時代」。母達は、涙で歌声がつまりました。子供の成長を喜ぶと共に、もう戻らない「あの時」「この時」を思い、寂しさもこみ上げる複雑な気持ちでした。時々口ずさむ今も胸がせつなくなります。
君を育て乍ら、心配と不安で潰れそうになったり、ほんの小さな成長振りに、嬉しくて口笛を吹きたくなったり、母の心はいつも揺れ動いていました。君に励まされ諭されもする今は、たゞたゞ「幸わせでありますように」と祈るばかりです。
早く子供から解放され、思う存分自分の時間が欲しい、と願っていたのに・・・本当に独り住いを始めるのですね。又ひとつ子供部屋が空っぽになります。寂しがってはいけません。成長して出て行く君を拍手で送りましょう。母は自分の足で、季節を感じる時を刻みます。
桜の季節、そして卒業式も間近です。これが最後の「桜の下でおめでとう」ですね。二十二年間ありがとう、楽しかったです。