「 出会いの色は青と白 」
池 田 真 弓(横浜市)
ミュンヘンに仕事で滞在したときのこと。初めて迎えた週末、かの有名なからくり人形の時計台を見に、マリエン広場に足を運んだ。巨大な人形たちがくるくると動き回る姿に目を奪われ、すっかり満足して街をぶらぶら歩いていると、青と白の色が鮮やかなお店が目に飛び込んできた。吸い寄せられるように近づいてみると、そこは白磁に青一色で染付けをした茶器と、青と白の縦縞の包装袋が可愛らしい紅茶を売っている店だった。店内に入ると、店の奥の棚の一番下に、蓋付きのマグカップと、それをろうそくで温めるキャンドルホルダーが置いてあるのが目に入った。どちらも、縁に青い線が一本引かれている
だけのシンプルなデザインだ。大きな玉ねぎのような形のマグカップを手に取ると、両手にすっぽりと収まり、何とも言えない温かみを感じる。「うーん、欲しい・・・」そう思いながら立ち上がると、今度は優しい花模様の描かれたマグカップに目が留まった。ずんぐりした先ほどのカップとは対照的に、真ん中がスーッとくびれたスマートな形をしている。「う、こっちも欲しい・・・」。溜息をついて二つを何度も見比べるが、結局手ぶらで店を後にした。
あのカップのことが忘れられないまま、一週間が過ぎていった。そしてやって来た二度目の週末、私はミュンヘンの地で誕生日を迎えた。
朝から美術館に行き、好きな絵を思う存分見て回る。そして夕方、美術館を後にすると意を決してあの店に行った。
「このカップのセットとこちらのカップ、両方ください。」
年に一度の特別な日、自分にプレゼントを奮発してもいいじゃない、そう思っての決心だった。二日前に誕生日を迎えた母へのプレゼントも兼ねて、といういい訳もしながら。青白のストライプの袋を提げて店を出た私は、嬉しさで頬が緩みっぱなしだった。
こうして我が家にやってきた二個のマグカップは、紅茶好きな母娘のティータイムをほっと暖めてくれるのに今も大活躍している。