第 2974 号2006.01.22
「 蕗の薹 」
植木 由紀子(日野市)
税務署に行った帰り、隣の農産物直売所に寄ってみた。みずみずしい野菜がたくさん並べてあった。ほうれん草はスーパーに比べると束が倍もありそうだ。嬉しくなって次々にかごに入れて行くうち、小さなパックの「蕗の薹」が目についた。うす緑色がなんとも言えず愛らしく、春らしい。ほんの小さいのが10個くらい入っている。夫も息子も特に喜びそうもないけれど150円なんだから迷うこともない、と買って帰った。
さてこれを何にしよう。やっぱり天ぷらがいいなと思い、他の物と揚げることにした。やっぱり早春の味だ。口に入れるとほろ苦さが一杯に広がる。
そして残った分は蕗味噌に挑戦してみた。秋田育ちの友人から貰ったり、デパートで買ったりしたことはあるが自分で作るのは初めて。
でも舌が覚えているので適当にやってみることにした。細かく刻んで少しの油で炒め、お酒と醤油、砂糖で味付け。その中に鰹節の小さいパック1袋分を入れたのは私のアイデア。味がなじんだら味噌を入れてしばし焦がさぬよう炒めて出き上がり。全て自分の舌と相談の目分量。でもとても美味しいのが出来た。
その日、大いにご飯が進んだ事は言うまでもない。
イタリアンもフレンチも美味しいけど、やっぱり和食はいい。それも自分の作った物、口に合うものが一番。150円で味わえた幸せに大満足の春の宵だった。