第 2968 号2005.12.11
「 誕生日 」
高 野 由美子(葛飾区)
今年も誕生日がやってきた。そういえば、もう何年も誕生日のお祝いをしていないし、してもらっていない。
私にとって誕生日は、齢を重ねていけばいくほど、縁遠くなっている。最後に盛大に祝ってもらったのは、いつのことだろう。すっかり忘れてしまった。
まだ、中学生ぐらいの時に、お寿司の大好きな私に、父が誕生日だからとお寿司を買ってきてくれたことがあった。すでに布団に入っていた私は、すぐに起きあがり、寝しなに食べるのは良くないとわかっていても、そのお寿司を喜んで口にしたものだった。
大人になってからは、お寿司もケーキも食べたいものはなんでも自分で口にすることができるようになったが、誕生日のお祝いといって好物を買ってきてくれる人はいなくなった。
誕生日に、お祝いのお花とかプレゼントとかをいただいた時は、嬉しくて一年に一度の最高の日だと思ったものである。
だが、この年齢になると、みんなから祝ってもらうということがとても気恥ずかしい。
できれば、ただひっそりとその日を迎え、何事もなかったかのように翌日を迎えるというのも良いかもしれないと思う。
でも、ちょっぴり、心の中で期待している自分がいる。誕生日の当日になって、誰かがお祝いのメッセージをくれるのではないかと期待している自分がいる。
こうなったら、今年の誕生日は一人で自分をお祝いするぞとばかりに小さなケーキを買ってきた。大口を開けて、まさに食べようとしている時に、電話のベルが鳴った。
「お誕生日、おめでとう!」
しばらく会っていなかった友人からだ。さすが親友、私の誕生日を覚えていてくれたのかとばかりに嬉しくなった。
やっぱり、誕生日って、いいもんだ。