第 2964 号2005.11.13
「 結婚記念日 」
仲 途 帆 波(ペンネーム)
「あと10年お互いに健康で、ボケずにいられるかしら」
「まず、大丈夫だと思うよ」
私はこう答えたものの、特に自信があったわけではない。そして、しばらくして妻の「10年」の謎に気がつき、思わずギクッと胸を衝かれた。
秋が深まり里や野が紅葉に彩られるころ、私たちの結婚記念日がやってくる。今年は40周年、妻の「10年後」とは金婚式のことだったのである。
結婚記念日に妻になにかプレゼントしたり、レストランに行った記憶はあまりない。確か銀婚式のときに、高価とはいえない指輪を買ったくらいだろう。もう少し配慮があっても・・・・、今になってそう思うが世代的にはそれが普通だった。しかし多分ラストチャンスの今回は、長年の罪滅ぼしに何か出来ないかと考え、図書館へ出かけて調べてみた。
結婚記念日に夫から妻にプレゼントする習慣は、イギリスに始まりアメリカに伝わって、貴金属商などの宣伝もあって広まったという。
金の50銀の25は常識だが、銅婚式が7周年、10錫、15水晶、20磁器、30真珠、35さんご(ごろ合わせではない)などは、ほとんど知られていないと思う。
さて40周年はルビー婚である。ふた昔も前にヒットした寺尾聰の「ルビーの指輪」を思い出したが、模造品ならともかく本物はとても手の届く価格ではない。
貴金属商の商魂というか陰謀に舌打ちする思いだったが、もう一度読んでみて“救いの神”を発見、40周年の備考欄に、英国では毛織物とあるではないか!
ウールならスーツだろうが着物だろうが、年金生活者の私にもなんとかなる。
今は妻が何を選ぶか、釣り糸を垂れるような気分になっている。