第 2958 号2005.10.02
「 しあわせのにおい 」
はらだ さちこ(新宿区)
今朝は霧のような雨が降っている。こんな日は絶対そうだ。・・・
ね、やっぱりいつもの角を曲がったら、ふっわとあまい人工のかおり。
晴れの日なら物干し竿で乾かしている柔道着かな?ガランガランと元気のいい音をたてて、あたり一面には洗濯の柔軟剤のにおい。高校生かな、中学生かな、柔道着の主は。雨の日の私の楽しみ。
懐かしい匂いがなくなってきている。都会はにおいを嫌う。子供の頃はいっぱいにおいがあったよ、田舎だったからなあ。
そう、夕方家路につく頃。西の空は夕焼け、その赤に引き込まれていると・・・どこからともなく、夕飯の支度の真っ最中なのか、しょうゆと砂糖の煮詰まるにおいが・・。頭の中に浮かぶのは、真っ白の炊き立てのごはん。はやく家に帰らなきゃと思ったけ。
それからそう、空高く、白い雲が青の空に映える秋。散歩するおだやかな日。強い香りに辺りを見回す。ああ、やっぱりあそこに金木犀。
わたしが小学校に入学する時、記念に母が庭に植えたのも金木犀。濃い黄色の可愛さと自分を主張するそのにおい。
そうそう、麦茶を沸かすときも懐かしさを感じる。やかんいっぱいの水を沸騰させて、ざざあっと焦がした麦を入れる。懐かしいにおい。
母は砂糖入りの麦茶を作ってくれたっけ。汗びっしょりで帰って飲む麦茶、美味しかったなあ。
それからそれから、お日様のにおいもなつかしいな。暖かいお日様の日差しをいっぱいに浴びて干されたふとん。ピシッと洗濯済みのシーツがかかって、そこに顔をうずめてみる。ひなたのにおい。
思い出す幸せの匂い、しあわせの時。