第 2950 号2005.08.07
「 なつやすみ 」
張ヶ谷 和美(世田谷区)
子供の頃、眩しい夏があった
棒1本でさえ遊び道具になった
早く走ること、高く飛ぶこと、男はケンカに強く、女は口が達者
それが一番大事な事だった
誰が黒いか、誰が何回、海に連れて行ってもらったか
それが夏休みの自慢だった
ラジオ体操に行き、朝顔の観察をする
咲く花を一番に見たくて、精一杯早起きをしたが駄目だった
もう朝顔は私に構わず昇った太陽に向かって
楚々と開いていた
土の付いた枝豆の束から鞘を取る手伝いは
何故か玄関の外でやらされた
柔らかい足は蚊にさされた
それでも美味しい枝豆を食べたくて
母の隣に座ってもぎ取った
夏祭り、海水浴、祖母の家
キラキラしていた毎日があたりまえだった
大人は大人で、子供は子供だった
夜、枕に頭を付けると吸い込まれるように眠った
あの頃はどんな夢を見ていたのだろう