「 近い国になったフィンランド 」
植木 由紀子(東京都日野市)
森と湖の国、サンタクロースのふるさと、ムーミンの生まれたところ……フィンランドについて知っていることと言ったら、この程度のものだった。数ヶ月前まではほとんど考えることのない遠い国だった。でも今はちょっと違う。
私が彼女に会ったのは、去年の秋のことだった。そのとき彼女は、フィンランドから新潟にある大学に勉強に来ている短期の留学生で、キャリアウーマンでもあった。私たちが出会ったのは東京なのだが、その前日、新潟で地震があり、旅行中だった彼女は東京から新潟まで帰ることが出来ず、旅館に泊まっていた。私の未熟な英語力では多くは解らなかったが、何とかそれらの事情はつかむことが出来た。旅館に泊まる彼女と私はメールアドレスを交わして別れたが、帰宅しても
彼女のことが気になって仕方がなかった。数日後、「新潟の寮に戻れたが、余震がこわくて眠れなかった」というメールが届いた。希望を抱いて折角日本に来たのに、大きな地震に遭い、私は、気の毒というか、申し訳ないような気持ちになった。
彼女から又、東京に来ると言う連絡を受けたとき私は、我が家に泊まらないか、と提案した。寮住まいで日本の家を訪ねたことがないと聞いていたので、ささやかな体験でもして思い出を作って貰いたいと思ったのだ。幸い彼女はとても喜んでくれた。彼女はおみやげに自国の紹介の本やパンフレットを持ってきてくれた。それを見ながら、フィンランドの暮らしの様々、家族のことなどを語り合った。私の英語力では十分に伝わらなかったことも多かったが、共に楽しい時間を過ごすことが出来た。
こうして私にとって、フィンランドは遠いけれどとても近い国になった。
年末に帰国した彼女からは、「きっと私の国にも来てください」とメールが送られてきた。いつか又会える日が楽しみである。