第 2929 号2005.03.19
「 春の息吹 」
和田 薫光(千葉県松戸市)
赤坂は坂の町だ。赤坂5丁目交番を起点として登っていく“三分坂”(さんぷんざか)という坂がある。長さにして200メートル位であるが、急勾配で心臓破りの坂だ。江戸時代にはこの坂が今よリもっと急坂であったそうな。そのため籠賃が銀3分も割増されたため“三分坂”の名がつけられたと木碑に記されている。その説明の木碑を見つけるまで私はそんな古い話とは知らず、登るのにちょうど3分かかるからその名がついたと思っていた。
坂の中腹に報土寺といって築地塀(練塀)が坂のため弓形になっているが故に港区の文化財指定を受けているこじんまりとしたお寺がある。
このお寺には江戸時代の最強力士、雷電為右衛門が葬られているとのことである。
三分坂の歩道に沿って石垣が築かれていて石垣の上は公園になっている。今年は、2月も寒暖の差が激しかった。朝いつものように坂を上りながら石垣に目をやると石と石の隙間から名前は分からないが若葉が顔を出しているのをみつけた。冬の間は乾いた苔しか目に入らなかったのに。日に日に春の息吹が見られ“はこべ”が顔を出したかと思うと“いぬふぐり”が現れたりわずかな隙間をかいくぐるようにして出てくる植物の生命力は感動的だ。
3月に入ってから4月、5月並みの温かさの日が報道されこの春は桜の開花が早そうだ。石垣の上部には見事な桜があり、石垣を覆うように垂れ下がっている。春の息吹の極めつけはやはり桜だ。4月を待たずにあと4~5日もすれば石垣の隙間観察から目を上に向けて満開の桜が楽しめるだろう。