第 2928 号2005.03.06
「 花の春 」
川西 いずみ(ペンネーム)
近所の小学校の梅の花が咲いた。
自宅から毎朝駅へ向かう途中にある。
毎年、節分を過ぎ、冬から春へ季節が変わることを、自転車で走りぬける風の温もりで感じるこの時期に、馥郁たる梅の香りで咲いていることに気付く。
いつも、嗅覚が先で、視覚が後になる。
いや、春の暖かい風を感じる皮膚の触覚がまず先であろう。
陽だまりの中を爽快な気分で自転車で風を切って走っている時に、梅が香を感じ、小学校の方に目をむける。
白梅が満開であり、後方に紅梅も咲いている。
校章が梅のデザインの小学校である。
自宅から小学校に向かう途中に小さな公園がある。
梅の花が終わる頃になると、その公園の桜の出番である。
桜は、なぜか帰宅途中の夜に、樹の前を自転車で通り過ぎる時に、芽吹いている気配に気付く。
毎年、趣の異なる二本の桜の大木に花が満開となり、はらはらと散っていく。
散りゆく夜桜に、明るい春の中に妖しさをもつ桜の精を感じる。
公園の桜が散りゆく頃、多摩川土手の桜堤通りが、文字通り桜のトンネルとなる。
春の季節を五感で感じられるこの町が、年々好きになる。