第 2925 号2005.02.13
「 無題 」
橋爪 見左子(千葉県印西市)
今日は金曜日。
あっ、お父さんのコーヒー豆がなかったんだと気がついて、スーパーのテナントのコーヒーショップに急ぎました。主人は、土曜の朝、いつも豆からひいていい香りを漂わせ、コーヒーを飲むのを楽しみにしています。
初めての店。どの豆にしようかなと迷っているとニコニコ顔の店員さんがいらして、イチオシの豆を勧めてくださいました。
「じゃあ、これを。」
とお願いすると、品切れ。では、別のを注文するとこれもまた品切れ。
どうして品切ればかりなの?とちょっと不信に思った私。でも、気をとり直して、まっいいか、他で買えばいいし…と内心思って店を出ようとした時、「明日の朝の一杯分だけですけど、この喫茶で出している豆、使ってみて下さい。ごめんなさい。」と店員のお嬢さん。
ほんのわずかなコーヒー豆でしたが、心がほんわかと溶けていくここちがしました。
よく考えれば、確かに豆を品切れにしたお店は、勉強不足かもしれないけれど、この店員さんの機転の利いた対応は、うれしかった。
相手の立場に立って、自然でしかもこころ優しい態度で接してくださったことは、閉じかけた私の心をやんわりと開けてくださったのでした。こんな店員さんなら、また買い物に行くわと、単純明快な私。
翌日、いそいそと入荷したての豆を買いに行き、彼女にお礼のひとこと。ちょっとした買い物がとてもいい出会いにまりました。人の気持ちって不思議です。
商売は、親切、誠実、奉仕の気持ちという父の口癖を思い出し、さわやかな思いの一日となりました。