第 2921 号2005.01.26
「 ボケ防止のパソコン 」
長坂 隆雄(千葉県船橋市)
長女から古希を迎えた私へ、祝いの目録が届いた。中には『パソコン一式』と記載されていた。
数ヶ月も経過し、半ば忘れかけていた頃、突然近くの電気店から、大きな荷物が運ばれて来た。
何が何だか分からないまま、理解できない質問やら説明を繰り返し、パソコンを設置して、風のように去って行った。
配線は勿論、プロバイダーとの契約、メールアドレス等の設置手続等の一切込みの購入契約であったらしい。
パソコンには全く無知の私にとって、狐に騙されたような気持ちであった。
恐ろしいものに触れる様に、しばらく放置していたが、せっかくの長女の好意を無にしてはと老妻に度々督促され、やむなくガチャガチャとキーを叩き、悪戦苦闘の日々を重ねるようになった。
説明書を読んでも、難しい文字の羅列に目と頭が痛くなった。やっと分かった事も、1日経てば記憶から消えて行く。覚えたそばから忘れて行く。
どうしても画面が消えなくなり、コンセントを引き抜いた事もあった。
幸いにして現役時代の貿易業務の経験から、英文タイプに馴染みがあり、キーボードをたたく事への抵抗が少なかったのが幸運であった。
悪戦苦闘の結果、ようやくにしてメールが発信でき、長女から祝福の返事を受けた時には、急に若返ったような感激を覚えた。
今では遠隔地に住む孫達とのメールの交換が日課となっている。
お陰でボケる暇もなさそうである。
今になって改めて、長女の狙いが私のボケ防止だったのかと思うと胸が熱くなった。