第 2915 号2004.12.05
「 五本木 」
宮原 秀子(神奈川県厚木市)
電車ごっこ、ケンケンパ、中当て、石蹴り
狭くて細い家の前のじゃり道は
小さい頃の遊び場でした
近所の子供が集まると
「この指とまれ!」
道の端には木のふたの付いたゴミ箱
夕暮れ近くには
買い物に行く母について
祐天寺駅の商店街へ
吊るされたざるから手早くおつりを出す
八百屋さんの威勢のいい声
乾物屋さんの卵はもみ殻の中
さつま揚げを素早く入れる揚げ物屋さん
買い物かごはいつの間にかいっぱいです
帰る頃にはお豆腐屋さんのラッパの音
家々からは夕食準備の音
焼き魚の煙と煮物のにおい
物干し台の向こうは赤オレンジ色の夕焼け
私は裸電球の外灯のスイッチをつけるのが好きでした
寒い冬も
丸いちゃぶ台で温かい料理を家族で囲み
ビールを飲む父や、母や兄の話や笑い声
テレビからはお相撲の行事の声
障子の向こうはとっぷり日が暮れ
北風に木々の葉が少し揺れています
昭和40年代前後
私のもっとも好きな生まれ育った町
目黒区五本木の風景です