「 100回記念、バイオリン 」
狩野 絵美(群馬県渋川市)
ある日、夢をみました。私が、大草原のそよ風の中で、バイオリンを奏でている夢でした。バイオリンなんて、音楽会などで遠くにみるくらい、近くで見たことも触れたこともありません。でも、夢から目覚めたときに、今ここにバイオリンがあったら、続きみたいに弾けるのでは、と思ったくらい感覚が残っていました。
それから一週間、いつもだったら夢のことなんてすぐに忘れてしまうのに、いつまでも、あの奏でたときの心地よさが体にのこっていたのでした。それから3日後、高校時代の恩師に、「バイオリンって、どうやったらひけるようのなりますか。」ときいたところ、そこから、ころころと話は転がっていき、その2日後には、先生がみつかって、レッスンを受けることになっていました。
それが今から、1年半くらい前の話になります。
仕事などでレッスンをお休みしてしまうこともありますが、たのしいという気持ちを持ったままつづいています。右手の弓を動かすことが、うまくできなくて、きれいな音が出せなかったり、やっぱりあの夢のようにはいかないけれど。
バイオリンはとても不思議な楽器です。毎日、平坦な気持ちでいることはとても難しくて、うれしい気持ち、つらい気持ち、いいことも悪いこともあります。それぞれの気持ちで弾くバイオリンの音はみな違うのです。そして、これらの音は、こころを癒してくれます。まだ、とても簡単な曲しか弾けないけれど、心のこもった音がします。
もうすぐレッスンが100回目になります。これは私にとって記念日です。
これからもずっと私の人生にバイオリンはあるでしょう。ちいさくて不思議なきっかけからはじめたバイオリンでしたが、今では大きくてかけがえのないものとなりました。200回記念のとき、自分はどんな気持ちでいるかしら。どうか穏やかな気持ちで奏でていられますように。