「 70才って何才デスカ? 」
鷹野 キミコ(山梨県北巨摩郡)
「お早うございます。お迎えに上りました。」門の外で教習所の若い先 生の声に、あわてて玄関をとびだす。
教本、お弁当、お茶の入った重いカバンを抱え車で20分程の教習所へと向かう。校長先生始め、50人近いスタッフに顔を覚えられ、校長先生自ら「お早うございます」と声をかけて下さる。
コースに出る「ハイ!一周したらクランク、S字、信号をよくみて渡り一時停車し坂を登る。頂上近くでサイドブレーキを引き……」等と2時間の実技。それから3時間の学科。孫と同年代の若者達と一緒に、ヘマをやりながらも体中の細胞が沸きたつのを感じる。ハードなスケジュールをこなし1ヶ月。晴れてライセンス取得「ヤッター うれし~い!」あれから7ヶ月。夕日に映える富士山を撮りに愛車で疾走。
教習所で苦楽を共にした友人夫妻に会いに八ヶ岳高原の新居をたずねたり、時には日がどっぷりと沈み、街燈もない田んぼ道に迷い込み迷走しながらやっとの思いで我が家に辿りついたりと、冒険とサスペンス?を体感するseventy!
都会から山里に移り住み1年。姉妹、友、身近な人達の愛と善意に支えられ文無しのスタート。夫も野菜作りを始め、玄人はだしとのご近所の評価をいただく。手作りのピックルス、トマトピューレ、ブルーベリージャム、春先に摘んでおいたヨモギの草ダンゴは大好評。
姉の丹精した広い庭で野鳥達のさえずりがきこえる。口紅水仙、糸水仙、すずらん水仙と花開き、庭いっぱい春のかおりに包まれるのももう間近。
裏山の散歩道も私のお気に入り。果樹園を抜け、雑木林へと続く……。
今日も庭の日だまりで夫との遅い朝食。手作りジャムをたっぷりのせたトーストにカフェオレ。知り合いの画廊からの企画展のお誘いに目を通しながら……澄んだ青空に富士山がくっきりと顔をのぞかせている。
“さあ”ニ幕目の幕を開けよう。