第 2887 号2004.05.23
「 遊々自的に 」
広瀬 桂子(調布市)
字を間違えたわけではなく、これは「遊んで遊んで、なおかつ自分的に生きる」なので、決して悠々自適ではない。
長い年月、私の海外旅行は「江ノ島と八丈島」なんて冗談を云い乍ら、たいして旅することもなく、ひたすら病身の夫を支え、懸命に走り続けて、夫が亡くなって五年、今、精神的にも身体的にも自由になって、さてこれから第三の人生を、旅したり、勉強したり、ゆっくり好きに生き度いと思った矢先、前々から痛いのを、注射でだましだまししていた膝痛が、悲鳴をあげ、片側の半身痛に変り、夜も寝られなくなった。原因は背柱管狭窄から来ているそうで、最後は背柱手術しないとか。「何で!?」と運命のいたずらを嘆いてみても仕方がない。
内科の先生の「狭窄症は治らないけれど、脊柱を支えている背筋を鍛えることで、ある程度日常生活を楽にすることが出来る」のお話に力を得て、一生懸命ストレッチ、水中歩行等々をして、どうにか夜も寝られるようになったけれど、住んでいる調布から殆ど出なくなってしまって、「調布のもぐら」なんて自分を揶揄していたが、ある時ふと考えを変えた。
幸い整形の先生も「本人が嫌なら、手術はしないよ。もうこれ以上注射は無理だから、暫く様子を見ましょう」と云って下さっていることだから、手術の時を一時でも延ばせるよう、自助努力しながら、私は「遊々自的」に暮すことにした。
ひたすら無理もしない、したいこともあきらめて、面白くも楽しくもなくあと十年生きるより、七年でも五年でもいいから、調布のもぐらは返上し、勇気を出して、可能な範囲で旅にも行き、グルメ探訪もし、勉強にも出かけて、満ち足りた日々を送り、人生の終りには、心から楽しかった、幸せだった、有難うと、云えるようになりたいと思っている。