第 2873 号2004.02.15
「 憧れをつなぐ 」
あきやま りえ(調布市)
春も間近のある暖かい昼下がり、ホームで電車を待っていると母親に連れられた幼い兄妹が目にはいった。二人とも電車が大好きらしく、線路のはるか向こうに電車がみえると喜んで手を振り始めた。その様子がとても可愛らしかったので思わず見守っていると、なんとホームに滑り込んできたその電車の運転手さんも笑顔で手を振り返したのだ。
子供たちは歓声をあげて喜んだ。見ていた私もなんだか嬉しくなってしまった。
さて、電車に乗り込んだ兄妹は母親の指示に従ってきちんと靴を脱ぐと、今度は窓にむかって座って車窓の景色を眺めている。そこへ、後方からノンストップの急行列車がやってきた。彼らは、通り過ぎていく急行列車に向かって再び手を振り始めた。すると、最後尾に乗っていた車掌さんが、やはり笑顔で手を振り返したのだ。幼い兄妹はまたまた大喜び。わたしもすっかり嬉しくなってしまった。
幼い兄弟にとってこの日の出来事は楽しい記憶となって残るだろう。
電車が大好きという二人の気持ちが、運転手さんにも車掌さんにも通じたにちがいない。彼らも、同様に電車が大好きな少年だったのかもしれない。こうやって子供たちの電車に対する憧れの気持ちがつながれていくのはいいものだな、と思った。