第 2858 号2003.11.02
「 「青山墓地散策」 ―都会に残された緑のオアシス― 」
柳瀬 総一(港区)
仕事の関係で田舎から東京に出てきて、青山墓地のそばに住み着き32年になる。
今年で定年を迎える(60歳)となった。
休みの日には、墓地の中をよく散歩する。墓地といえば暗く陰気な処と思われがちだが、茲は明るい大都会の緑地帯だ。春は桜並木が見事で隠れた桜の名所、夏は緑陰に蝉時雨、秋は紅葉、冬は常緑樹に積もる雪と四季を通じ結構楽しませてくれる。見上げれば周囲に高いビルが沢山建ち並んだものだ。それぞれが喧騒を競い合っている様で、中の静寂と対照的だ。祭られている人々も明治、大正、昭和と歴史に息衝くもののふ(武士)、文士などなど多彩で、こんな人も眠っているのだと新しい発見も楽しい。つわものどもの夢の跡を感じる。
今年の紅葉は、例年になく色付きがいいようだ。11月に入って急に寒くなったせいか、いつもなら茶色にしわがれてしまう所が、特に桜の紅葉がいい。
私は、桜がすきだ、日本人なら誰でもそうだと思うが。今の時期に葉を落とし冬に耐え、春になると一気に花を咲かせる、その木の根元に美しい女の死体が埋まっているからこんなに妖艶な花を付けると読んだ記憶がある。
私も38年近くのサラリーマン生活の葉を落とし、来る春のシニアーの生活をエンジョイする為今はエネルギーを蓄えようと思った散歩でした。
(2002年11月 晩秋の散歩より)