第 2855 号2003.10.12
「 がんばれ先輩君 」
御船 叶(ペンネーム)
都会へ戻る車中。
近くの席の若者の会話が聞こえてきた。
「東京にもこっちにも悪い奴はいるけどな、
東京の悪い奴のほうがタチが悪い。気をつけろよ」
やや崩れた服装の青年と、
真面目そうな青年の二人連れだ。
どちらも、まだ顔に幼さが残っている。
「メシは? いつもコンビニとかじゃ栄養片寄るからな」
片方の真面目君が何か答える。
「賄い付きなのか…。そりゃいいな」
就職か進学かは分からないが、
ちょっとだけ都会の水に染まった先輩が、
あれこれアドヴァイスしているらしい。
「あとな…。好きな人を作ったほうがいいぞ。
楽しいし、いろいろ張り合いがある!」
会話を聞くともなしに聞いていた私は、
その意外な一言に
(ほっ…)
と暖かい気持ちになった。
好きな人か…。
先輩君は、近くに好きな人がいて、
その娘の笑顔を励みに毎日頑張っているのかな。
誰かを好きでいる気持ち、
それがエネルギーになっているのかな。
ちょっと不良風といえなくもない先輩君、
がんばれ。
故郷から離れていろいろあるだろうけど、
君は絶対不幸せにはならないよ!