第 2849 号2003.08.31
「 片品村の青い花 」
斉木 紀久子(横浜市)
残暑が続く中、我が家のベランダで、真青な花が涼しげに咲いています。朝顔の品種と思われるその花は、群馬県片品村のお顔も知らない方から送って頂いた種でした。
昨年八月、中学生のバスケット部の合宿引率で、片品村を訪れました。民宿から体育館までの道のりには、庭や道端にとりどりの花が咲いていて、とりわけ目についたのがこの青い花です。あちこちの軒先に緑のつるをからませ、繁った葉っぱの間に青々と咲いた花は、本当にきれいでした。
私は何とかして、その花の種を頂けないものかと、思いを巡らす道のりでした。とりあえず切手と封筒を用意しようと、〒マークのある酒屋さんに入り、お店の奥様に聞いてみました。するとご親切にも、向かいの家は友達なので、自分が頼んであげると云って下さったのです。残念ながらお留守だったので、こちらの住所氏名を書いた封筒を酒屋の奥様に預けてお願いしました。そして秋、その花の種は、向かいの奥様から届けられたのです。
この夏、息子達のバスケットの最後の試合がありました。汗だくになってボールを追ったこの三年間の、すべてを出しきり、一番素晴らしい最高のゲームを見せてくれました。すっかりたくましく成長したその姿に、大きな拍手を贈り、涙がこぼれるほど感動した日の翌朝、何と、あの青い花が一輪咲いてくれたのです。それは偶然なのか…片品村からの温かいエールが届いたような気がして、嬉しくて嬉しくて、思わず花に「ありがとう」の言葉をかけました。
風の中に秋の気配を感じながらも、次々と咲いてくれる花を見ていると、お二人の奥様のご親切に心から感謝し、夏の忘れられない思い出として、毎年大切に育てて行こうと思う毎日です。