第 2845 号2003.08.03
「 線香花火のこと 」
佐藤 眞理(ペンネーム)
ずいぶん花火をしなくなった。
年をとったせいもあるし、住まいの事情もある。
しかし、一番の理由は
お気に入りの線香花火がなくなったこと。
細い藁のような植物の先に黒い火薬のついたもの。
小学生の時は確かにあった。
そして中学の頃にはピンクや金の色とりどりの薄紙に
こよりのように包まれた線香花火がでてきた。
とても派手で綺麗な包み。
みんなはそのほうがかわいいって言っていた。
それも買ってみたけれど、
やはり地味で質素な線香花火のほうが
なんとなく線香花火らしかった。
風に揺れることもこよりの花火より少ないし、
ぱっ、ぱっとはじける花が大きくて、
最期の玉もずっと大きかった。
馴染みの花火は、高校に入るくらいに珍しくなった。
そのときちょっと買いだめをした。
大学に入る頃には私自身、だんだん花火から遠ざかっていった。
そして気がついた頃には
あの線香花火が消えてしまっていた。
きっとあの線香花火はちっちゃな工場でつくっていて、
いつの間にかはじけだされたのではないかしら、
そう思うととても寂しい。
一時期捜していたけれど、
最近は捜さないことにした。
いつかきっと巡り合える。
そのときを楽しみにしていよう。