第 2844 号2003.07.27
「 親切な運転手さん 」
小柴 光夫(松戸市)
眼科で手術を終え電話でタクシーを呼んだ。五分ほどで車が来た。
乗ろうとするとドアが開かない。すると、
「少しお待ちください」
と運転手さんが降りてきてドアを開け、
「お待たせしました。はいどうぞ」
と言う。これまで何度となく車を利用したが、乗るときは運転手さんはいつも座ったままでドアは自動で開く、そが……。私はハイヤーに乗ったような気分になった。問わず語りに話すのを聞くと、長年やっていた事業が最近の不況続きで倒産、二年前に二種免許をとりやっと就職したという。五十代も後半か、実直そうな運転手さんだ。道路は知っているつもりでしたが、いざとなると知らない箇所がたくさんあり困ります。とコボしていた。世間話をしているうちに家の近くに来た。車を停めると、また運転手さんが降りてきて外からドアを開けてくれる。この運転手さんは、どのお客にもこうしているのだろう
か。
さらに驚いたのは、二千百円の料金を、レシートはそのままに二千円で結構ですと百円は取らない。途中少し回り道をしたので、お詫びのつもりだったのか。お釣りは要らないと言ったことはあるが、運転手さんに負けて貰ったことはない。こんな律儀な運転手さんは蓋し初めてである。手術は成功、親切な運転手さんにも出会い、嬉しい一日だった。