第 2840 号2003.06.29
「 音楽のある生活 」
羽根 美音(ペンネーム)
それはちょっとした偶然から始まった。
私には子供の頃から憧れていた楽器があった。
その名はヴァイオリン。
何て美しいのだろう。楽器のフォルム、弓の繊細さ。
それを弾く人の優雅さ。そして音色の素晴らしさ。
どれを取っても申し分ない完成された芸術品に思えた。
「弾けたらいいなぁ。」
でもそれは、あまりに遠い世界の楽器だった。
周りには楽器を習っている人さえ、見当たらなかった。
それが、ある日突然、現実の話として習う事になった。
すでに三十路を少しばかり過ぎていた。
楽器の経験は遥か昔ピアノを数年習った程度だった。
自分でも無謀な冒険だと思った。
しかし一度きりの人生、やりたいことはやってみよう・・
清水の舞台から飛び降りる気持ちで教室へ入門した。
そこは思っていた以上に大変かつ困難を極める世界だった。
まずは音階はドイツ語読みで、楽譜にはイタリア語が満載・・
それ以前に、左右の手に別々の仕事をさせる事からして
わたしの頭はパニックに陥った。
あまりの不器用さに、先生も本気で心配されてしまった。
・・あれから2年の月日が流れた。
驚くことに挫折しないで今日もギコギコとヴァイオリンの
練習に励む自分がいる。
決して「好きこそ・・」ではなく「○○の横好き」なのだが
少しずつ曲らしきものが弾けるようになってきた。
ご近所には迷惑かもしれないが、生涯学習としてこれからも
マイペースで取り組んでいきたいと思う。
そしていつか素敵な小品でも奏でられたら・・淡い夢である。