第 2827 号2003.03.30
「 春を愛するひと 」
富田 真司(名古屋市)
三寒四温、日々春の足音が近づく毎日であります。以前ならこの時期梅の香りを楽しみ、桜の蕾の膨らみに心踊らす頃であったと思うのですが、どうもここ数年季節感が感じ難くなってきているように感じます。これは異常気象に見られる暖冬や冷夏、食料品コーナーに行けば一年中の食材が手に入る影響もあると思います。私など旬の分からない食べ物が沢山あります。
しかし最大の要因は私達のライフスタイルの変化にあるのではないでしょうか。少し暑ければクーラーを入れ同様に寒ければ暖房を入れてしまう。20年位前を思い出せば、冬はコタツ、夏は扇風機くらいしかなく、体に感じる温度が変わることはありませんでした。比べて現代は普及した空調機器により一年を通して快適空間の実現が出来ましたが、体に温度を感じる機会が減りそれが私達から季節を感じる心を減退させてしまっているのではないでしょうか。
世界を見渡しても四季が明確に分かれ、かつそれぞれに趣があるところは少ないと聞いたことがあります。今後はこの趣をなるべく感じられる幸せを享受すべく、あまり空調機器に頼らず自然の感温に身を任せていこうと思います。地球を温暖化から守る省エネにもよいことでしょう。華麗な桜の美しさ、新緑の青葉の瑞々しさ、燃えるような紅葉の儚さ、冬の澄んだ空気に佇む富士の凛々しさを感じる心を残したいです。しかし暖房の効いた部屋でアイスクリームを食べる幸せも忘れがたいです。自分の強欲さが悲しいです。