第 2826 号2003.03.23
「 国電中央線の『桜』 」
竹田 康夫(国立市)
いつも利用する国電中央線で、春先一番の楽しい景色といえば、各駅停車で中野駅を出て、東中野駅へ停車しようとする辺りの左手・北側の土手に咲く花の景色が一番かと思う。
冬の枯れた色で、あらゆるものが包まれているなか、2月の終り頃から新しい世界が開けるように、その土手に菜の花が鮮やかに黄色く咲き始める。3月になると、露草であろうか、菜の花の黄色に紫色を添 える。そして、極めつけは4月を迎えようとする頃、桜が咲き始めて絶景となる。
この東中野の景色は、各駅停車の電車でなければ味わえない。快速では、黄色や紫色が、ぼやけて飛んでいくだけで、世の中、ゆとりがないと楽しいことを見落としてしまうことを暗示している。
国電中央線から見える景色は、自然とはほど遠い、生活の臭いのする建物と建物のあいだを這うように続く道路と車ばかりである。色鮮やかな自然に驚異するのは、東京の自然が滅びつつあるからだろう。
国電中央線の桜の景色では、市ヶ谷から飯田橋にかけての外堀沿いの桜が一番と、いわれる方がいるかもしれない。しかし、せわしない快速からの方が(快速が堀り沿いを走っている)、各駅停車より桜が良く見える味気なさと、菜の花や露草が咲く前奏がないことから、外堀沿いの桜は次点ではなかろうか。