第 2819 号2003.02.02
「 無題 」
板倉 眞理広島市)
電車通勤になって半年、毎朝、毎朝、出会う、いつもの人。
名前も、住んでるところも何も知らない人たち。私は空想をしてしまう。
交差点のちょっと前から、走っているカレ。
こんなに早い時間に会社が始まってしまうのかな?運動のため、走ったほうが健康によいなんて奥さんに言われていたりして。
たのしそうに、おしゃべりしながらくだりのエレベーターにのっている二人。
親子でもなく、友達というには年が離れ過ぎてる。それにしては毎日楽しそう。お局さんと新人OL。
結構お互い気を使っている?
キオスクの袋をさげ、プラットホームの先に陣取るカノジョ。
お弁当を持っていくということは、昼休みにもなかなか出れない仕事。
うーん、保育士さんとか、看護婦さんとか。
一番気になるのは、端っこしか座らない色白の彼。
端っこが空いてないと、他にスペースがあっても40分立っている。毎日、どこに行くのだろう。姿がないと、やめたのかしらと考えてしまう。いじめがあったのではないかしら。ちっちゃなミスを気にやんでるのでは?2、3日して出会うとほっとする。よかった。風邪だったのだろう。
「楽しいことは趣味、お金をもらうしんどいことが仕事」となにかで読んだ。いつもいつもしんどいわけではないけれど、「あー、もうやめたい。会社なんて」と思うとき、いつもの顔ぶれに出会うと、もう少し頑張ってみようと会社に向かえる。口もきくことのない、私ひとり一方的に頼りにしている彼らを「通勤の戦友たち」と呼ぼう。