「 乙女の姿しばしとどめむ 」
仲途 帆波(ペンネーム)
・水曜日 同じ趣味の会の幹事Tさんから、こんなFAXが
入った。 「次の日曜日にYさん宅でひらく
新年会で、百人一首をやることになりました。
私は全然忘れてしまいましたが、なにぶんよろし
く」欠席を考えた。68歳の今日まで私は百人一首
をやったことがない。
・木曜日朝 お断りするつもりでYさんに電話。だが不在で、
留守電に要点を。
・木曜日夜 YさんからFAX。
「お電話有り難うございました。百人一首の会が
終った頃にとか、見学だけとかおっしゃらずに、
どうぞお気軽にお出かけ下さい」こう優しく誘わ
れては、年長者(少し)に対して断りきれない。
・金曜日 市立図書館へ出かけ百人一首の本を借りてきて、
読んでみたものの春過ぎて夏来に……あまの原ふ
りさけ……田子の浦にうち……この三首しか覚え
ていない(というより勉強した記憶がない)。
かるた会に出るからには、
せめて十首くらいはと思ったが……。
・日曜当日 女性6人男性4人の仲間が集まり、楽しい新年会に
なった。
さて、かるた会。
上の句を少し詠んだだけで素早く取る方は、幸い
居なかった。が私が覚えていた三首は近くにな
かったし、すぐに取られた。「天津風……乙女の
姿しばしとどめむ」だけはと、目の前に札を置い
たがTさんにさらわれた。
しかし8枚取れたのは、望外の出来。
まさかこの歳になって、教養の浅薄さをさらけ出すことになろうとは!
怖いことに「楽しかったわ。また機会があれば……」で、お開き。